マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑨
一敷地一建築物の原則
建築基準法は、一敷地一建築物の原則を採用し、敷地ごとに、接道義務のほか建蔽率制限、容積率制限、高さ制限などの建築基準を適用して遵守することを求めます。余裕がある親の住宅をコンパクトな老後の住宅に建て替えるとともに、隣に子の住宅を新築して、二世代近居を計画する場合などにおいて、一敷地一建築物の原則が思いのほか大きな影響を与えることがあります。この原則に忠実過ぎると親子近居のメリットが生かしきれないことにもなります。少しの工夫によって、法律の決まりをまもりつつ、親子近居のメリットを生かすことができます。
1.建築物の敷地
「敷地」とは、一の建築物、または、用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいいます。これを、一敷地一建築物の原則(建築基準法施行令1条)といいます。この原則によれば、一つの敷地には一つの建築物しか建てられないことが基本となります(図1)。ただし、用途上不可分であれば複数の建築物が一つの敷地に立つことも認められます。用途上不可分の例として、住宅とそれに附属する駐車場があります(図2)。
住宅と車庫のほか、事務所建築と機械室、工場建築と倉庫、学校建築の校舎と体育館などが用途上不可分の例です。
2.余裕のある土地を分割して親と子の住宅を建てる
一方、いくら親子であっても親の住宅と子の住宅はそれぞれ単独で住宅用途に利用できるため、用途上不可分とはみなされません。例えば図1の土地に親と子の住宅を建てる場合、図3のように並べて建てる場合は、図中の破線に位置で土地を分割することを想定すれば、両方とも建築基準法43条の接道義務 を満たしますので、それぞれが個別の敷地をもつ親の住宅と子の住宅とすることができます 。
これに対して図4のように並べて建てようとして、破線の位置で土地を分割することを想定すると、接道義務を果たさず、建築できない土地が生じます(図中の上半分)。
合法的に親の住宅と子の住宅を建てるためには、それぞれが建築物の敷地として利用できるよう、接道義務を果たす必要があります。図5は路地状敷地とすることで接道義務を果たす方法です。この際、接道長さ(間口)は最低2m必要となります。もっとも車の利用を想定すると2mでは極めて不自由ですので、現実的な利用に支障がない長さで接道させます。
図6は、道路を開設して接道させる方法です。この場合の道路は一般に、位置指定道路(建築基準法42条1項5号道路)となります。位置指定道路は私道のことが一般的です。道路幅員は最低4m必要です。また、車の円滑な通行を確保するために道路の幅員によって、既存の前面道路との接合部分に隅切りが必要となります。道路部分はいずれの敷地にも属さない土地となります。
3.敷地分割すると建築制限に違反する可能性
一敷地一建築物の原則は、接道義務のほか、建蔽率制限、容積率制限、斜線制限などの制限を敷地ごとに適用して合法的であることを求めます。例えば、将来の家族構成を考えて、子の住宅の建築面積や延べ面積を広く取りたい場合もあります。図3、図5、図6のように分割のしやすさだけで分割すると、子の住宅の建蔽率や容積率が制限値をオーバーしてしまうことも考えられます。分割線の位置を変更して問題が解決すればそれでよいのですが、建物の間取りなどの関係でそれが困難な場合もあり得ます。
そのような場合は、土地を分割することなく、全体を一つの敷地として、その上に広い床面積をもつ子の住宅部分と狭い床面積でもよい親の住宅を、一棟の建物として建築します。具体的には、渡り廊下などで繋げて一つの建築物とする方法があります。全体で一敷地一建築物の原則が適用され、全体で建蔽率制限や容積率制限をクリアーすればよいことになります。
他の方法として、例えば冷暖房の熱源を発生させるために必要となる機械室を設けて共用し、親の住宅と子の住宅と機械室を用途上不可分と認めてもらうことも考えられます。もっともこの方法で建築確認が取得できるかについては流動的な部分がありますので、事前に相談して一定の確証を得ておくことが大切です。
4.既存の親の住宅の庭先に子の住宅を新築する
以上は、親の住宅と子の住宅を同時に新築することを念頭にしたものですが、既存の親の住宅の敷地の一部に子の住宅を新築することも考えられます。例えば、図1の建築物(親が住宅として使っている)の道路側に子の住宅を計画する場合です。この場合も上記の1から3の内容は、ほぼそのまま適用できます。もっとも、親の住宅が既存不適格建築物になっている可能性もありますので注意が必要です。
ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。
(明海大学不動産学部 中城康彦)