マイホームを買う前に読んで安心Q&A④
借りた土地にマイホームを建てる
日本では土地と建物は別々の不動産で、それぞれに所有権があります。一般に、マイホーム(持ち家)は土地所有権と建物所有権の両方を同じ人が所有しますが、土地は所有せずに借地し、借地上にマイホームを所有ことも可能です。建物を所有してもよい(建ててもよい)という条件で土地を借りて使う権利を借地権といいます。
借地上には借地権者の建物が立っていますが、借地契約が解除されて土地を使う権利がなくなると、まだ利用できる建物も解体しなければならないことから、借地権は借地借家法によって保護され、容易に消滅しないようになっています。
建物を建てる際に適用される都市計画法や建築基準法の制限は土地所有者でも借地権者でも同じですから、建築可能な広さや高さに違いはありません。ただし、地主と結ぶ借地契約の内容によっては建築可能な建物が制約される可能性もあります。また、借地権付きマイホームは住宅ローンがおりにくい可能性があることに注意します。
建物は土地に定着していますので、建物を建てて所有するためには土地を利用する権利(敷地利用権)が必要です。敷地利用権は権利の総称で、具体的には土地所有権、借地権、使用借権が考えられます。マイホームの多くは土地と建物を同じ人が所有します。つまり、土地所有権にもとづいて建物を所有します。
土地と建物を別々の不動産とする日本の法制度は、土地と建物を別々の人が所有することも認められます。しかし、何らの権利も持たずに勝手に他人の土地に建物を建てて所有することは違法行為で、認めることはできません。土地所有者と建物所有者が異なる場合は、建物を建てて所有することに両者に合意(借地権)があることが前提となります。
そこで借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権を借地権と定義しています(第2条)。地上権と土地の賃借権はいずれも他人の土地を利用する権利です。二つの権利は細部で相違点もありますが、借地借家法では両者を借地権として保護しています。
なお、地上権、賃借権は民法で用語や内容を規定しています。これに対して借地借家法は民法の特別法として民法と異なる内容も規定します。民法と特別法(借地借家法)の定めが異なる場合、特別法(借地借家法)が優先されます。なお、借地契約を新たに締結する場合は、地上権による借地権か土地賃借権による借地権かのいずれかを選択します。
借地権付きマイホームを考える場合、借地権の種類に注意します。借地期間の更新が認められる借地権(便宜的に、普通借地権ということがあります)と期間満了によって借地権が消滅する定期借地権があります。さらに、マイホームに適用できる定期借地権には期間50年以上で契約する定期借地権(便宜的に、一般定期借地権ということがあります)と期間30年以上で契約し、期間満了時に地主が借地人の建物を買取ることを取り決める建物譲渡特約付借地権があります。
普通借地権の場合、借地権者が希望すれば更新できることが基本ですので、長期にわたって借地権が存続します。半面、既に誰かが所有している借地権を譲り受ける(購入する)場合はともかく、新規に普通借地権で土地を貸してもよいと考える土地所有者は多いとはいえません。定期借地権では一般定期借地権を利用することが多くなっています。契約期間が最低でも50年ですので、これで十分と考える場合は検討可能となります。
普通借地権と定期借地権では借地条件(契約時の一時金、毎時の地代)が異なります。また地域によっても異なりますので、事前に確認することが必要です。おおよその目安を示すとすれば、土地を購入する方法と比較してマイホーム取得時に土地にかかる費用は1割程度(保証金または敷金)で済むのではないでしょうか。なお、保証金も敷金も期間満了時には返還されます。年間の地代は土地価格の2%程度を想定すれば足りると思われます。
建物を建てる場合、都市計画法、建築基準法や消防法などの法律の規制を受けます。このような法律を公法といいます。公法は何人にも等しく適用されますので、土地所有者が建て主で、借地権者が建て主でも規制の内容は同じです。つまり、借地権者だから小さい建物しか建てられないということはありません。
一方、借地借家法は貸主と借主の関係を律する法律で、このような法律を私法といいます。借地契約は借地借家法が認める範囲内で契約自由ですので、例えば、「この土地には2階建までしか建築しない」や「木造の建物に限る」という取決めをすることも可能です。この場合、3階建てや鉄筋コンクリート造は建築できないことになります。このような観点から借地契約を確認することが必要となります。
借地権付きマイホームの課題の一つは住宅ローンです。第一に、金融機関の中には借地権(付きマイホーム)には融資しない方針を取るものがあります。第二に、借地権のうち土地賃借権には抵当権が設定できないため、土地と建物の両方に抵当権を設定することを必須とする金融機関を利用する場合は、抵当権が設定できる地上権にもとづく借地権としたうえで、事前に相談する必要があります。
使用借権を敷地利用権とするマイホーム(使用借権付きマイホーム)もあります。使用借権はただで借りて使う権利です。おじいさんの土地をお父さんが借りて使うなど、親族間などで利用されることがあります。借地借家法の適用はありませので、土地所有者が変わって立退きを要求されたなど場合に借地権のように保護されない可能性があるので注意が必要です。また、一般に高価な他人の土地をただで利用することについて、贈与とみなされる可能性もあるなど税務面についても事前の確認が必要です。
ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。
(明海大学不動産学部 中城康彦)