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マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑦

区画分割型の宅地を購入する際の留意点

 広い敷地をもつ邸宅のほか店舗や事業所の跡地を、複数の区画に分割して、一般的な広さの住宅にすることが行われます。この際、問題になりやすい点の一つに、接道規定があります。都市計画区域および準都市計画区域内では、建築物の敷地は建築基準法の道路に長さ2m以上接していなければならないとする接道義務の運用は厳格で、無道路地に建築物を建築することはできません。
 一般的な接道方法となるように区画分割できればよいのですが、相応の工夫、時には無理をして接道させることもあります。建築可能な土地であればそれでよいとする考え方もありますが、購入後の建築計画の自由度、完成後の使い勝手、さらには、将来の資産価値も併せて考えましょう。

接道規定と小集団開発

 農地の宅地転用、大規模敷地における相続の発生などに際して、区画分割して複数の戸建住宅とする小集団開発がおこなわれることがあります。日本の新築戸建て住宅供給の一定程度の割合を占めていますが、このような開発が良好な住環境を確保しているか、将来的に良好な住環境を育成することができるかについては問題がないわけではありません。

建築基準法の道路と接道規定

 都市計画区域および準都市計画区域内では、建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければなりません(建築基準法43条)。表1に該当するものが、建築基準法の道路です。要するに、建築基準法は幅員4m以上の道路に間口2m以上接することを最低限の条件として、建築物を建築することを認めています。

表1 建築基準法の道路※43条3項道路は省略

 接道規定は厳格に審査されますので、図1のような土地を4つの敷地に区画分割する場合、図2のように分割すると無接道の土地(無道路地)が生じます。無道路地の価格は極めて低廉になりますので、開発事業者がこのような区画分割をすることはありません。一般に、図3のように敷地を延長して接道する方法(敷地延長方式)か、図4のように道路を開設して接道する方法(道路開設方式)を採用します。

建築基準法の道路と接道規定

 図3の画地B・Cを路地状敷地ということがあります。広さ140㎡のうち路地部分が20㎡あり、実際に建物を配置することができる部分(有効宅地部分)の広さは120㎡となります。もっとも、建築基準法の敷地面積は140㎡ですので、容積率制限、建蔽率制限などは140㎡をもとに計算します。

 路地部分の間口は建築基準法では2mあればよいのですが、2mでは実質上、駐車することができません。仮に駐車するとその脇を通行することもできません。この部分を車が通過する、駐車場にするなどの場合は、最低でも2.5m、できれば3m程度は欲しいところです。

 路地状敷地の土地単価は安くなります。言い換えると買いやすい土地といえます。この際、路地状敷地の中でも価格が安い路地部分の面積をなるだけ狭くすることが総額を高くすることにつながりますので、開発事業者は3mあれば使い勝手が良いことは承知しつつも、なるだけ狭くしたい意向が働きやすいことに注意します。

 路地部分の広さは将来の売りやすさや資産価値にも影響します。

道路開設方式の留意点

 図4で開設する道路は、一般に42条1項5号道路(位置指定道路)(表1参照)で、私道となります。私道であっても建築基準法の道路に該当すれば建築物を建築することに問題はありません。この限りで公道と区別はありません。

 ただし、誰かが所有者となります。図4では、画地A・B・C・Dの所有者で所有することが一般的です。全体を1筆として共有することもありますが、一般に4筆以上に分割してそれぞれの宅地に接しない筆を所有します。画地Aの所有者が所有する私道部分を画地Aと接する位置にしないのは、公道に接道する画地Aの所有者が、自分には私道は必要ないとして宅地部分と私道部分を併合して一体利用してしまい、道路の機能を喪失させてしまうことがあるからです。もとより、これは認められない行為です。私道を含む土地を購入する場合は、念のため自分以外の私道の所有者について確認するとよいでしょう。

 私道部分については、固定資産税の課税を免れることができます。一方、水道やガス管の埋設工事などの場合に他の所有者の承諾を求められることがある、維持管理の負担を求められることがあるなど、公道との違いもあります。
 位置指定道路の幅により、車の回転のしやすさを確保するため、取り付け部分に隅切りが必要となります。 

住環境を確保する




図5 敷地延長部分のコモンスペース化

 図3の路地状部分、図4の位置指定道路を最低限の2m、4mとする場合、住環境に優れた住宅地とは言い難いことが一般的です。将来的な人口世帯の減少を考えればデメリットが拡大することは間違いありません。その対応策としては、2m、4mをそれぞれもっと広くする方法があります。一方、開発事業者の視点からは制約もあります。

 そのような場合、路地部分や位置指定道路部分とその周辺をうまく利用しあって、狭いながらもまとまりと個性のある住宅地を造ることも可能となります(コモンスペース化、図5)。やや高度な技になりますので、この方法の可能性を検討する場合は、専門家に相談するとよいでしょう。

 ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。

(明海大学不動産学部 中城康彦)