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マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑧

傾斜地の建物の高さと階数

 平坦な土地に立つ建物の高さはの計測はそれほど難しいことではありません。これに対して傾斜地の場合は注意が必要です。例えば、第一種低層住居専用地域で高さ制限が10m(3階建て相当)に規制されている場所であっても、一見すると5階建に見えるような建物が建てられることがあります。建築基準法の高さの定義によるものですが、傾斜地で住宅建設を予定している場合、隣接地に思いがけず大きく見える建物が立つ可能性があることに注意します。
 今回は高さと階数について考えますが、住宅地下室の容積率不算入措置によって一定の条件を満たす住宅の地下室は容積率に含まないことも、大きな建物が立つもう一つの理由です。

1.斜面地に立つ建築物の高さ(平均地盤面)

 建築物の高さは、地盤面からの高さで測ります。敷地が平坦な場合は、一般に、木造住宅等の勾配屋根の場合は棟木(むなき)が、RC造等の陸屋根の場合は、パラペットの天端(てんば)が建築物の高さになります。敷地が傾斜している場合は、平均地盤面を想定し、そこから高さを測ります。平均地盤面は図1のとおり、計算式で求めます。単純のため、ここでは建築物の形を直方体として説明します。
 直方体の建築物ABCDIJKLは傾斜地に立っていて、一部が地中に入っています(図中網掛け部分)。この場合の建築物の高さは、実際に見えている部分ではなく、平均地盤面を想定し、そこから最上部までを高さとします(高さ:h)。平均地盤面は、建築物が地中に埋まっている外壁面積を建築物の周長で割って求めます。

図1 平均地盤面の計算方法

 平均地盤面の高さ:AG=(S1+S2+S3+S4)/(AB+BC+CD+DA)(S1,S2,S3,S4は地中に埋まっている外壁面積。ただし、図ではS1=0)
この結果、建築物の高さ:hは、AIでは実際に見えている部分(AI)より低くなる一方、CKでは実際に見えている部分(EK)より高くなります。この限りにおいて、AIが10mを超えていても違反建築ではありません。

2.敷地の高低差が3mを超える場合

 敷地の高低差が3mを超える場合は、高低差3mごとに平均地盤面を想定します。つまり、ひとつの敷地に複数の平均地盤面を想定し、それぞれの平均地盤面からの高さを測定します。
 図2のような断面計画の場合、正面からはセットバックを繰り返しながら5層で高さ15mの建築物のように見えますが、高低差3mごとに地盤面を想定して、階数および高さを計算しますので、高低差3mごとの平均地盤面からの高さはそれぞれ7.5mとなります。
 地盤面に埋まっている階について、天井高の1/3以上が地中にあれば地階(地下1階)とみなしますので、平均的に1/2が地中にある図2の場合、階数は地下1階地上2階となります。

図2 階数および高さ

容積率についても一定の条件を満たす住宅の地下室は容積率に含まないことから、図2の場合、容積率は3層分ではなく2層分で計算します。第一種低層住居専用地域は最も厳格に住宅地の環境を守る地域ですが、傾斜地にあっては、高さ、階数、容積率のそれぞれについて、制限値以上に大きく見える建築物が建築されることがあることに留意します。 

 ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。

(明海大学不動産学部 中城康彦)