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マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑩

斜線制限による高さの制限

 建築基準法は、建築物の広さや高さなど建築物の形態を制限することで良好な地域環境を守ります。形態制限といわれるもので、容積率制限や建蔽率制限と並ぶ代表的な形態制限に斜線制限があります。斜線制限は建築物の高さを一定範囲内に制限することで地域環境を保とうとするもので、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の3種類があります。
 斜線制限を含む形態制限は、都市計画区域、準都市計画区域内で適用されますので、それ以外の場所に立つ建築物に斜線制限の適用はありません。

1.斜線制限の内容

 斜線制限は、用途地域ごとに制限内容が定められています。容積率制限や建蔽率制限のように、複数の数値が準備されていてその中から選ぶのではなく、制限内容は用途地域ごとに確定しています。表1にその内容を示します。ただし、欄外にも記したとおり、一部地域で例外的な数値が適用されることもあります。
 表1に、「用途地域の指定のない区域」とありますが、斜線制限は都市計画区域と準都市計画区域で適用されることから、市街化調整区域、非線引き都市計画区域で用途地域が指定されていない区域をさしています。斜線制限が適用されない都市計画区域外、および、都市計画区域外ながら例外的に都市計画法の規定の一部が適用される準都市計画区域外では、高さ制限や容積率制限は適用されまませんので、どのような高い建物も建てることができます。

表1 斜線制限の内容

2.建築可能な高さの範囲

 住宅を建てる場合の用途地域は多く、住宅系の用途地域と思われます。ここでは中高層住居専用地域内の敷地(以下、「本敷地」といいます。)で考えます。中高層住居専用地域には、第一種と第二種がありますが、斜線制限の内容は同じです。
 道路斜線制限は、前面道路との境界線からの距離に応じ、建築物の高さを制限することにより、道路への圧迫感などを与えないようにします。具体的には、前面道路の反対側から一定の勾配で見上げた高さより低い部分で建築するよう規制します。本敷地に適用される道路斜線は表1で示す通り、勾配1.25です。図1中の「道路斜線制限」(一点鎖線)がこれを示し、この制限線より低い部分でハッチングした「建築可能範囲」に建築することができます。

図1中高層住専地域の道路斜線制限 図2 中高層住専地域の隣地斜線制限 図3中高層住専地域の北側斜線制限

 隣地斜線制限は、隣地と接する境界線からの距離に応じ、一定の高さを超える部分について建築物が建築可能な範囲を制限することで、隣地への圧迫感などを防ぐものです。本敷地では一定の高さは20mで、それを超える部分について、1.25の勾配で見上げた制限線で制限されます。図2中の「隣地斜線制限」がこれを示し、この制限線より低い部分でハッチングした「建築可能範囲」に建築することができます。
 北側斜線制限は、真北方向に面する境界線からの距離に応じ、一定の高さを超える部分について建築物が建築可能な範囲を制限して、北側の敷地で一定の日照等が確保できるようにするものです。本敷地では、真北方向に面した境界線上で高さ10mまで建築可能で、それを超える部分について、1.25の勾配で見上げた制限線で制限されます。図3中の「北側斜線制限」がこれを示し、この制限線より低い部分でハッチングした「建築可能範囲」に建築することができます。

3.斜線制限の注意点

図4 建築可能な高さ(建築等高線)-1  図5 建築可能な高さ(建築等高線)-2

1)建築物を後退させた場合の制限の「合理化」(緩和)
 建築基準法で、隣地に接して建築可能とされる場合でも、建築工事のためには隣地から一定の後退距離を取る必要があります。また、建築後のメンテナンスのためにも後退距離は必要です。また、建築基準法が民法に優先する場合であっても、民法が規定する50センチメートルの後退距離を取ることは良好な「相隣関係」を保つうえでも意識すべき数値です。
 いずれにせよ、建築物は敷地境界線から後退させて建築します。建築物を境界線から後退させて建築する場合、道路斜線制限と隣地斜線制限は制限の「合理化」が可能です。正式には「合理化」ですが、実質的には制限が緩和されます。
図1は幅員8mの前面道路に面する本敷地の道路斜線制限を示しています。その内容は上記のとおりですが、本敷地で建築物を道路境界線から6m後退させて建築する場合、道路斜線制限はこの後退距離だけ、前面道路の反対側の境界線をさらに反対側に移動させた地点まで移動することができます。図中の破線がこの場合の道路斜線制限を示しています。
 建築物を後退させない場合のA点で建築可能な高さhAは、hA=1.25×8m=10.0mですが、建築物を6m後退させた場合のB点で建築可能な高さhB=1.25×(6m+8m+6m)=25.0mとなります。
 道路斜線制限を受けて十分な高さが建築できそうにない場合でも、建築物を後退した位置に配置することができれば、より高い高さまで建築可能となります。
 隣地斜線制限にも同様の「合理化」(実質上の緩和)がありますが、隣地境界線上で20mまで建築可能ですので、戸建て住宅を計画する場合は十分といえます。ここでは、隣地斜線制限の「合理化」についての説明は省略します。
2)高度地区は真北方向から真南方向にかかる
 道路斜線制限と隣地斜線制限を平面図でみると、敷地境界線と直角方向の制限です。このため、前面道路幅員と敷地形状が同じであれば、敷地の方位に関係なく同じになります。これに対して、北側斜線制限は真北方向から真南方向にかかる制限です。

 図4と図5はいずれも、前面道路幅員8m、間口30m、奥行き25mの同一形状の敷地です。図4は敷地の奥行き方向が真北方向と一致していますが、図5は45度ずれています。道路斜線制限と隣地斜線制限は上述のとおり同一です。北側斜線制限は真北方向から真南方向にかかりますので、図4では(北側境界線)と記した隣地境界線から真南方向にかり、図5では(北側境界線)と記した二つの隣地境界線から真南方向にかかります(図中に北側斜線の方向として矢印で示します)。
 以上をもとに、建築可能な建築物の高さをそれぞれの図中に等高線で示します。これからわかるように、同一用途地域で、同一形状の敷地であっても方位が違えば建築可能な高さが異なる、いいかえると、実質的な斜線制限の内容が異なります。住宅の建設用地を購入する場合は、方位も無視できないことがわかります。
 なお、以上は、①建築物は敷地いっぱいに建築する(後退した場合の「合理化」は考慮外)、②日影規制は適用されていない(日影規制が適用される場合、北側斜線制限は適用しない)、③道路斜線制限の打ち切り(表1中、適用距離として示している内容)は考慮外、を前提としています。また、④北側斜線制限では、建築物を後退させた場合でも制限の「合理化」がない、⑤建築基準法とは別途、地方公共団体の条例で「高度地区」を定めることがある。高度地区の内容は地方公共団体ごとに異なり、個別に調べることが必要ですが、高度地区の多くは北側斜線制限と同様、真北方向から真南方向にかかる高さの制限である、⑥図2と図3を比べると、考えるまでもなく北側斜線制限の方が厳しいと勘違いしがちですが、方位によって北側斜線制限の実質的な内容が異なることから、そのように断言することはできない、ことに注意が必要です。

 ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。

(明海大学不動産学部 中城康彦)