マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑬
省エネラベルの表示
地球環境にやさしく、また、家計にもやさしい暮らしのために、住宅の省エネルギー性能を高めることが求められています。その実現のために法律の見直しや制度の新設が進んでいます。なかでも改正建築物省エネ法は身近な法律で、住宅についても省エネ基準に適合することが求められます。住宅を販売する事業者は広告等の際に、住宅の省エネ性能を示すラベルを表示することになります。注文住宅で新築する際は設計を委託した建築士が省エネ性能について説明します。新制度の施行は今後ですが、将来は新制度に適合する住宅が普通の住宅になります。快適さはもとより将来の資産価値の観点からも新制度を念頭にマイホームの取得を考えることが望まれます。
1.建築物の省エネに関する法律の改正
2022(令和4)年6月17日「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律」が公布されました。同法律によって「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」(建築物省エネ法)が改正され、同日公布されました(改正建築物省エネ法)。改正建築物省エネ法により、建築主の性能向上努力義務、建築士の説明努力義務、省エネ基準適合義務の対象拡大、エネルギー消費性能の表示制度などが規定されました。
2.建築主の性能向上努力義務(施行日:公布の日から3年以内)
建築主は、建築(新築、増築、改築)をしようとする建築物において、建築物のエネルギー消費性能の一層の向上を図るよう努めなければなりません。「一層の向上」とは、省エネ基準を上回る省エネ性能を確保することを指しています(適合義務)。
現行(改正前)の建築物省エネ法では住宅については省エネ基準への適合義務はなく、規模により届出義務か適合努力義務にとどまっていましたが、改正により、規模にかかわらず適合義務に強化されることになります(図1)。
3.建築士の説明努力義務(施行日:公布の日から3年以内)
省エネ性能の一層の向上を実現するためには、専門家である建築士が情報提供を行い、建築主の意識向上を図り、省エネ性能の取り組みを促していくことが不可欠といえます。建築士は、建築物の設計に際し、設計の委託者である建築主に対し、建築物のエネルギー消費性能やエネルギー消費性能の向上について説明するよう努めなければならなりません。注文住宅を建築する場合は建築士にしっかりと説明してもらうことになります。
4.省エネ性能表示制度(施行日:公布の日から2年以内)
2024(令和6)年4月以降、建築物の販売、賃貸を行う事業者は、新築建築物の販売、賃貸の広告等をする際に、所定のラベル(図2に例示)を用いて省エネ性能を表示することが必要となります。建築物の購入や賃借の際に省エネ性能を把握し、性能の高低を比較検討できるようにすることで、省エネ性能への関心を高め、省エネ性能が高い建築物が選択されやすい市場環境を整備することを目的としています。表示方法については国土交通大臣が告示で定め、従わなかった場合は勧告等を行います。
ラベルは住宅と住宅以外の別、戸建て住宅とマンションの別、省エネ設備がある場合とない場合など、いくつかの区分ごとに定められます。また、目安光熱費が示されることもあります。ラベルは電化製品など、省エネ性能のラベル表示で先行する分野の表示方法や海外の建物の表示方法なども参考にする、一般にアイデア募集をするなどを経て決定されました。
ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。
(明海大学不動産学部 中城康彦)