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マイホームを買う前に読んで安心Q&A⑭

宅地建物取引士の業務を知って売買契約との関係を確認する

 土地をすでに持っていて注文住宅の建て主となる場合を除いて、不動産会社に土地や建物の斡旋をお願いすることになります。購入する不動産が決まったら売買契約を結びますが、不動産の売買は金額が大きいことや一般消費者には対象不動産がどのような不動産か、また、不動産の売買契約はどのような点に注意すればよいのかなど、わからないことが多く含まれます。不動産の取引を適切に進める役割を担う国家資格者が宅地建物取引士(宅建士)ですが、契約を締結するのはあくまでも消費者自身です。不動産売買契約の仕組みと宅建士の役割を正しく理解し、契約当事者としての知識と自覚を備えることが混乱なく取引を進めることにつながります。

 昨今の日本では、一般消費者がかかわる不動産売買で、契約書を作成しないことは皆無といってよいと思われますが、民法は、「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾をしたときに成立」し(522条1項)、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」と規定しています(522条2項)。つまり、契約は意思の合致によって成立し、契約書の作成は契約成立の要件ではありません。不動産の売買を規定する宅地建物取引業法(宅建業法)によっても、契約書の作成を義務付ける規定はありませんので、不動産売買についても民法どおり、当事者の意思の合致によって契約が成立することになります[1]

 スーパーで野菜や果物を買う場合に契約書の作成を義務付けるとすると、いかにも経済活動を阻害しますので、売買契約の成立に契約書の作成が要件とならないことには合理性があります。一方で、不動産の売買では、購入した建物で雨漏りした、住宅ローンを組むことを前提に契約の申込みをしたがローンが下りなかった、買った家が引渡しを受ける前に火事で焼失したなど、さまざまな可能性に備えた内容とする必要があります。これらに対応することは一般消費者には不可能といえます。そこで、役割を果たすのが宅建士です。

 土地や建物の斡旋をする不動産会社は、宅建業法の定めに従い、宅地建物取引業(宅建業)の免許をもつ宅地建物取引業者(宅建業者)でなければなりません。宅建業の免許を取得するためには従業者の5人に1人以上の宅建士を配置しなければなりません。つまり、宅建士は宅建業者の中でも中心的な役割を果たして不動産の取引の円滑な推進に貢献する不動産取引の専門家です。

 宅建士は実際には役所での調査、現地の案内など、様々な仕事をしますが、宅建業法は契約の締結に係る重要な二つの役割を宅建士に与え、当該業務は宅建士にしかできないことになっています。


[1] 借地借家法では定期借地権契約や定期借家契約の場合に公正証書等によることを規定しています。


 一つは、重要事項説明(宅建業法第35条)で、他の一つは、書面の交付(同37条)です。

 まず、宅建業法第35条は、宅建業者は、売買を媒介する(図1参照)場合、取得しようとしている当事者が取得する不動産に関し、売買契約が成立するまでの間に、宅建士に、一定の重要な事項を記載した書面を交付、説明をさせなければならない、と規定しています。取引対象の不動産の確定、契約の解除、損害賠償の予定、ローンの斡旋など、契約の条件などを契約前に確認する業務です。説明を受けた内容に異議がなければその内容で契約に臨みます。

 次に、宅建業法第37条は、宅建業者は、不動産の売買に関し、媒介した契約が成立したときは契約当事者に、遅滞なく、所定の事項を記載した書面を交付しなければならず、書面には宅建士に記名させなければならない、と規定しています。契約成立後に、代金の支払い、契約の解除、ローンの斡旋など、不動産の売買で取り決めておくべきことや特別に取り決めたことがある場合はその内容を書面にするとともに、専門家としての宅建士が記名することになっています。

 要するに、契約締結前(重要事項説明)と契約成立後(書面の交付)に不動産取引の専門家の宅建士が関与することで取引の適切を図ります。一方で、冒頭に述べた通り、契約は当事者の意思の合致によって成立し、書面の作成は必須ではありません。これらを合わせると、①契約締結前に宅建士等が関与して重要事項を説明する、②契約当事者で契約する、③契約成立後に宅建士等が関与して書面を作成し交付する、ことが宅建業法の想定する契約の手順です。

 上述のとおり一般消費者同士で行う②に完全な内容を期待することはできないことから、これを挟む形で①と③が規律されています。他方、②と③は基本的に同一の内容(契約内容)ですので、内容や手順が輻輳します。「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(国土交通省)によると、第37条の規定に基づき交付すべき書面は、同条に掲げる事項が(もれなく)記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができる、としています。

 実際にはこの方法を採用することも少なくありません。つまり、②を作成する際に③を想定して、内容を整えるとともに、書面化することが行われます。その際、宅建士等が一定のアドバイスをすることが考えられますが、契約当事者は、上記①~③の関係を理解し、契約締結の当事者であることを忘れずに、主体的に行動することが重要です。

 ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。

(明海大学不動産学部 中城康彦)