マイホームを買う前に読んで安心Q&A㉘
マイホーム購入前にチェックすべく国のマクロ経済指標と不動産関連統計データ
データからみる景気動向
マイホーム購入を考えている方々は、色々な不動産情報を集めると思います。今の時代には、様々な情報が溢れるため、どのような情報がどのように集めて何を表すかを把握することも大変だと思います。そのため、本コラムでは、マイホームを買う前に、調べておくと有益なマクロ経済指標・不動産関連統計データを国のデータを中心に紹介します。
まず、国の統計データベースとしては、総務省統計局が整備し、独立行政法人統計センターが運用管理する「e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)」があります。e-Statは、政府が公表するほとんどの統計データを収録しており、社会・経済・不動産関連の国のデータを収集できます。加えて、不動産関連データは、国道交通省が公表するデータからも収集します。
人口
人口は、国の社会・経済・不動産に最も影響を与える要因です。国内の人口の増減、又はある地域の人口動向などは、不動産のみではなく、モノの需要と供給を表す指標として適切だと思います。例えば、人口が増えれば、国内に消費する人が増えて需要が増えることとそれに合わせて供給も増えることが考えられます。つまり、景気が良くなる兆しの社会的現象を表すと思います。図2は国勢調査から神奈川県の人口を時系列データでダウンロードして筆者が作成したグラフであり、神奈川県の人口が少子高齢化にも関わらず、2000年以降増加していることが確認できます。つまり、住宅需要も人口増加に合わせて、増えると予想されます(「e-Stat」→キーワード検索に「国勢調査」→「時系列データ」→「男女,年齢,配偶関係」を検索)。
国内総生産(GDP)
国内の経済状況はGDPから把握できます。GDPが増えると国民の所得が増えることでより国民が不動産を購入できる余力の深く関係します。例えば、GDPが上昇すれば、国民の所得が増えることを意味し、物価の考慮は必要ですが、住宅の購入意欲はそれに合わせて増えることが考えられます。図3は物価の影響を取り除かない名目GDP(赤い線)が2021年第1四半期から2024年第3四半期まで全般的に上昇トレンドを示していることが確認できます。一方、図3におけて、物価の影響を取り除いた実質GDPは2021年以降、平均でみれば、横ばい推移を示すことが確認できます。名目GDPと実質GDPの差は物価の状況を示し、日本においては、2021年以降物価が上昇トレンドであることが分析できます。物価上昇はつまり、住宅価格の上昇につながる可能性が高いと思います(「e-Stat」→キーワード検索に「GDP」→「国民経済計算」→「四半期別GDP速報」を検索)。
不動産価格
不動産価格指数は、不動産価格の動向を示します。国土交通省は大都市圏と各地方の住宅と商業用不動産を対象に不動産価格の動向を示す「不動産価格指数」を作成および公表しています。図4は東京都住宅の不動産価格指数を示します。東京都住宅の不動産価格指数は、住宅総合、住宅地、戸建住宅、マンションの価格トレンドを示しており、2021年以降、東京都の住宅の価格が上昇トレンドを示していることが確認できます。住宅の不動産価格指数は、2010年1月から12月の住宅価格の平均を基準値の100として、住宅価格の変化を示しています。例えば、東京都の2023年末のマンションの不動産価格指数は、180~190を示しており、2010年と比べて、概ね80%~90%上昇したことが確認できます。しかし、国土交通省の不動産価格指数は、神奈川県の指数を作成・公表していませんが、首都圏である神奈川県の不動産価格は、東京都と類似なトレンドで2021年以降上昇している可能性が高いと思います(「国土交通省ホームページ」→検索欄に「不動産価格指数」→「建設産業・不動産業:不動産価格指数」を検索)。
地価公示
地価公示は、毎年1月1日時点の土地の価格について国土交通省が調査して、年1回公表する土地価格の指標です。住宅は土地の上に建つので、土地の価格が上昇すれば、住宅の価格も上昇します。特に戸建住宅は土地の価格の影響をより多く受けると思います。図5-1と図5-2は首都圏の2023年と2024年の住宅地と商業地の地価公示変動率を示します。2023年と2024年は、首都圏の住宅地と商業地の地価が共に上昇していることが確認でき、不動産価格の全般的な上昇トレンドが把握できます(「国土交通省ホームページ」→政策情報・分野別一覧→「土地・不動産・建設業」→「地価公示」)。
住宅着工統計
住宅着工統計は、住宅の着工件数(戸数)を示します。図6は東京都と神奈川県の2020年から2023年の住宅着工件数の統計を示しており、東京都と神奈川県の住宅着工戸数が横ばいのトレンドを示していることが確認されます。つまり、首都圏は、住宅の供給量が横ばいを示しており、住宅価格が大幅供給増加などによる価格下落の現象が起き固いと考えられます(「e-Stat」→キーワード検索に「住宅着工統計」→「建築着工統計調査」→「住宅着工統計」を検索)。
まとめ
以上をまとめると、人口の増減を把握して、不動産の需給を予想します。また、国内総生産(GDP)動向をみて、今後の景気トレンドをみて、不動産市場の動向を予想できます。さらに、不動産の価格や土地の価格動向をみて、不動産市況を予想できます。なお、住宅着工件数を把握することで、住宅市場の現状が予想できると思います。つまり、国のマクロ経済指標・不動産関連統計データから不動産市場の動向を把握して、マイホームを購入する前に、住宅市場の現状を把握することができると思います。上記統計データの他に、より多くのマクロ経済指標・不動産関連統計データをマイホームを購入する前に確認すれば、今後の住宅市場の予想まで見えてくると考えられます。次回は住宅市場と住宅価格の予想について紹介したいと思います。
ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。
明海大学不動産学部准教授 金 東煥(キム ドンファン)