
マイホームを買う前に読んで安心Q&A㉙
購入を希望する住宅価格は適正か?
多くの人々は、マイホームを購入する前に、住宅の価格が適正かどうかを検討するでしょう。住宅価格は、現在の景気や金利動向などのマクロ経済状況、マンションか戸建住宅などの住宅タイプ、所在地、面積、最寄り駅までの徒歩距離といった地域的・個別的要因によって決まることが多いです。本コラムでは、マイホーム購入前に、データを基に住宅価格を合理的に検討する方法を説明します。
景気動向
現在の景気動向は、国内全体の不動産価格に大きな影響を与えると考えられます。国の景気が良ければ、不動産を購入しようとする人が増えるため、住宅需要が高まり、住宅取引の増加につながります。住宅取引が活発になると、住宅価格の上昇や不動産市場の活性化が進み、結果として国内景気の拡大にも寄与するでしょう。しかし、住宅価格が購入者の経済的余力を超えて高騰すると、購入希望者が減少し、取引の停滞や不動産市場の調整が起こり、不景気につながる可能性があります。つまり、不動産市場は、景気循環の中で拡大と縮小を繰り返します。
景気動向を把握するには、日経平均株価、GDP成長率、内閣府の景気動向指数などを参考にするとよいでしょう。日経平均株価は、インターネットや新聞で簡単に確認できます。GDP成長率は、内閣府の国民経済計算からその推移を確認できます。基本的に、日経平均株価やGDP成長率の時系列グラフを見れば、現在のトレンドの増減を把握できます。また、内閣府の景気動向指数は、現在の景気の動向を示します。例えば、図1に示す2024年12月の景気動向指数は、国内景気の下げ止まりを示していることが分かります。これは、景気の後退局面が和らぎ、今後の景気改善が期待できることを示唆しており、不動産市場の回復が期待されます。

図1 景気動向指数(内閣府 https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di.html)
金利動向
日本銀行の政策金利は、民間銀行の金利に影響を及ぼし、不動産市況にも大きな影響を与えます。日本銀行が政策金利を引き上げると、住宅ローン金利が上昇し、結果として住宅購入費用も増加します。住宅購入費用が増加すると、購入希望者が減少し、住宅需要の低下や不動産市場の調整が進む可能性が高くなります。近年、日本銀行は長年続いた金融緩和政策を終了させ、金融正常化(政策金利の引き上げ)を進めています。これに伴い、株式市場や不動産投資市場が大きく変動しており、景気や不動産市場は金利動向の影響を強く受けています。
不動産価格の動向
不動産価格は、国土交通省が毎月公表する「不動産価格指数」などの指標を参考にすることで、全体的な価格の推移を把握できます。不動産価格指数によると、2024年10月の住宅価格は2024年9月と比べて下落しましたが、2023年10月と比べると上昇しています。つまり、長期的には全国の住宅価格は上昇傾向にあると考えられます。

(出典:国土交通 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html)
マンション・戸建住宅
マンションは共同住宅であり、各所有者が所有・管理する専有部分と、エレベーター・廊下・エントランスなどの共有部分で構成されます。一方、戸建住宅は独立した1棟の住宅であり、一般的に単世帯の家族が暮らすことが多いです。マンションと戸建住宅の価値については、マンションは立地の良さが資産価値に大きく影響するのが特徴です。一方、戸建住宅は土地が資産となる点が特徴であり、特に敷地面積の広い戸建住宅は、高値で取引される傾向にあります。
立地
マンションと戸建住宅の価格は、利便性や周辺環境の影響を受けて決まります。最寄り駅に近い住宅は、利便性が高いため、他の住宅よりも価格が高くなる傾向があります。大規模なショッピングモールなどの商業施設は、駅の整備と同時に開発されることが多く、周辺の住宅価格の上昇要因となるでしょう。また、マンションと戸建住宅の価格は、土地価格(地価)の影響を大きく受けます。つまり、地価が高い地域の住宅は、価格も高くなる傾向があります。
土地情報ライブラリ(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)
国土交通省は、地価情報と不動産(マンション、戸建住宅など)の取引価格情報を提供する「土地情報ライブラリ」を公開しています(図3参照)。地価情報では、国土交通省が国内地価の基準として公表する地価公示などの情報を閲覧できます。また、不動産取引価格情報では、全国の各地域で実際に取引された不動産の価格情報を提供しています(図4参照)。不動産取引価格情報では、地域名のみが公開され(例:千葉県浦安市明海など)、具体的な住所までは特定できませんが、マイホーム購入前に周辺地域の住宅取引価格を把握することは、非常に有益でしょう。

(出典:国土交通省 https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)

(出典:国土交通省 https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)
まとめ
マイホームを購入する前には、現在の景気動向、金利動向、不動産価格の動向を把握し、現在の不動産価格が上昇トレンドにあるかを考慮することで、住宅購入のタイミングを判断できるでしょう。例えば、今後景気が上向き、不動産価格が上昇傾向にある場合、もちろん、個々の状況によって異なりますが、一般的には住宅購入に適したタイミングの一つと考えられます。加えて、購入を希望する住宅の立地や種類、面積などを把握し、土地情報ライブラリで類似物件の価格動向を確認することで、購入希望物件の価格が適正かどうかを判断する際に役立つと考えられます。
まとめ
以上をまとめると、人口の増減を把握して、不動産の需給を予想します。また、国内総生産(GDP)動向をみて、今後の景気トレンドをみて、不動産市場の動向を予想できます。さらに、不動産の価格や土地の価格動向をみて、不動産市況を予想できます。なお、住宅着工件数を把握することで、住宅市場の現状が予想できると思います。つまり、国のマクロ経済指標・不動産関連統計データから不動産市場の動向を把握して、マイホームを購入する前に、住宅市場の現状を把握することができると思います。上記統計データの他に、より多くのマクロ経済指標・不動産関連統計データをマイホームを購入する前に確認すれば、今後の住宅市場の予想まで見えてくると考えられます。次回は住宅市場と住宅価格の予想について紹介したいと思います。
ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。
明海大学不動産学部准教授 金 東煥(キム ドンファン)