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注文住宅を依頼するときの契約あれこれ

 注文住宅は世界で唯一のオーダーメイドの住宅です。法律による建物への規制や土地が存在する地区の特有の取り決めなどのために全てが希望通りに行くとは限りませんが、すでに存在している家を買うよりも格段に手間も時間がかかります。

(1)ハウスメーカーなどとの建築請負契約

 ところで、注文住宅を建てる契約を「建築請負契約」といいます。請負契約とは、民法の条文によれば、「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法632条)」契約です。

 報酬の支払い時期については633条で「報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。(後略)」とされています。

 おや?と思った方も多いのではと思います。報酬は何回かに分けて、例えば契約を締結した時、着工時、着工中、引渡し時に分けて支払うのが一般的とされています。

 どういうことかというと、民法の特に契約についての規定の多くは任意規定で、条文と異なる内容の契約も可能です。521条に、「何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる(1項)。契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる(2項)。」とあります。つまり、民法には請負契約の規定はあるけれども、法令の制限内で自由に契約の内容を決定できます。

 ではなぜ民法で請負契約が規定されているかというと、当事者間で取り決めておかなかった事態が生じて裁判になった場合などに、裁判官が当事者の意図や民法の規定を参照して、事件の解決を図るためといえます。

 ですから、契約書は隅々まで目を通し、分からないことは必ず聞くことが重要です。特に注文住宅の場合は自分や家族の希望の取りまとめやハウスメーカーとの打ち合わせにかなりの労力がかかるため、契約内容のチェックが疎かになりがちです。もちろん、何のトラブルもなく契約通りにことが運べば何の問題もないのですが(そして多くはトラブルなく、あるいは些細な行き違いで済みますが)、万が一の備えは必要です。

(2)土地所有者との建設用地の売買契約または土地利用権設定契約

 さらに、建築請負契約の他にもいろいろな契約を締結する必要があります。建設予定地を購入したなら土地の売買契約が締結されます。また建設予定地を借りた、あるいは地上権を設定して注文住宅を建てるなら土地賃貸借契約あるいは地上権設定契約などの土地利用権の設定契約がなされます。これら土地関係の登記に加え、建築請負契約により注文住宅が完成したら、建物の登記も必要になります。

(3)専門家との土地建物の登記手続委任契約

 登記は自分でも申請できますが、申請に不備があると審査に通らないため、登記手続きを専門家に頼む場合には登記手続き委任契約を締結することになります。土地は所有権移転登記などを司法書士に、建物は新たな不動産なので所有権保存登記を土地家屋調査士にそれぞれ頼みます。

(4)金融機関との住宅ローン契約・抵当権設定契約

 また、請負契約の報酬の支払いを金融機関からの住宅ローンで行う場合には金融機関との間で住宅ローン契約を締結します。それに伴い、担保として完成した抵当権を設定するには抵当権設定契約を締結し、土地か建物、あるいは両方の登記に抵当権設定登記を行い、それを司法書士に依頼します。

(5)連帯保証人と金融機関との連帯保証契約あるいは保証会社との保証委託契約

 住宅ローンの借り入れの際には抵当権のような物的担保の他、保証人などの人的担保が求められます。保証人を立てる契約は保証契約と言い、多くは連帯保証契約になります。近年では連帯保証人ではなく、保証会社に保証料等を支払って自己の債務を保証してもらうことが増えてきており、その場合は保証会社との間で保証委託契約を締結することになります。

(6)まとめ

 このように、注文住宅に限りませんが、不動産を取引するときにはいくつもの契約を締結するのが通常です。そしてほとんどの契約に対価や手数料が必要で、契約書に貼付する印紙税も必要になります。これらの費用を合計すると思わぬ金額になることもあるので、注意することが重要です。

 ご不明な点がございましたら、明海大学不動産学部までご確認ください。

明海大学不動産学部教授 浜島 裕美